2020.12.04 09:00:09


ロボットや人工知能(AI)を農業に取り入れる「スマート農業」の普及に向けた実証事業が、茨城県内各地で進められている。本年度は、農林水産省の七つの実証事業のほか、自治体によっては地域の大学や農機メーカー、地元の生産者と独自に連携して行っている。先端技術を使った作業の省力化や農業データの活用により、農家の担い手不足の解消や収益改善を目指す。高額な機械や法律の壁といった課題にさまざまな関係者が挑む。

稲敷市八千石のほ場で10月、県県南農林事務所などが主催するスマート農機の実演会が開かれた。トラクターの運転手がタブレットでもう1台の無人トラクターを操作し、2台でほ場を耕したり、自動運転の田植え機の実演をしたりした。リモコンで操作する農業用ドローンも登場。150人以上の農業関係者が詰め掛け、真剣なまなざしを向けた。

県農業総合センター農業研究所によると、実証事業に参加したある農家では、自動運転田植え機を使うことで、田植えの時間が最大34%減り、植え付けのずれも数センチ以内と精度も上々だったという。収量を量りながら収穫できるコンバインと、収量データを使って適切な量の肥料を施せる田植え機をセットで導入した農家では、前年に比べ、導入しなかったほ場よりも収量が上がった。

■産学官連携
国は19年度からスマート農業の社会実装に向けた事業を本格的に始めた。本県では、農水省の七つの事業が進行中で、龍ケ崎や坂東、常陸大宮各市などの生産者が実証に参加している。事業の対象は、水稲の省力化の鍵となる自動運転農機のほか、イチゴ栽培用のビニールハウス内の温度や湿度を総合的に判断し、ハウスの開閉を行う装置など多岐にわたる。

市町村による独自の取り組みも活発だ。つくば市では「つくば未来共創プロジェクト」と銘打ち、スマート農業に関する研究を行っている企業や研究者に地元の生産者を紹介して、技術の社会実装を後押しする。

■1台1千万円超
普及に向けた課題は山積みだ。ロボットトラクターを含む最新の農機は、赤外線センサーや超音波ソナーといった安全に大きな役割を果たす装置が高額で、1台1千万円以上する。

龍ケ崎市に80ヘクタールの水田を持つオカダファームの岡田彬成社長は「今の値段ならもう一人雇った方が安い」と指摘する。

農地の点在も課題だ。農地間の道路を現状の法律では自動運転できない点もネックだという。「1キロ近く離れているほ場もある。1台運んで、戻ってもう1台運ぶのはつらい」と顔をしかめる。

茨城南部スマート農業加速化実証コンソーシアムのメンバーで農機開発大手、クボタの開発担当者は「普及には国の協力も必要」と強調する。農道を自走するには法改正が欠かせない。自動運転農機を動かす無線LANの混線を防ぐため、農機用の専用回線を用意してほしいという。

実証代表者である、農業・食品産業技術総合研究機構の吉永悟志研究員は「スマート農機は価格が高く、単純に導入するだけでは収益は上がりにくい。ほ場の集積は効果が高いので、自治体のバックアップが必要」と話した。

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